行政の多重債務対策の充実を求める全国会議

行政・地方自治体等の皆さまへの情報提供サイト
 

―なぜ「行政」なのか―

 1990年代以降、長引く不況の下、失業、減収、病気、離婚、家庭問題等を原因として、多くの世帯が経済的苦境に立たされるようになり、他方大量宣伝・高金利・過剰貸付・苛酷な取立等を手段として、クレジット・サラ金・商工ローンなどの業界は急速に貸付残高を増加させてきました。
 こうした社会構造のもと、思わず高利の借金を抱えた人が、その返済のために別の業者からも繰り返し借入れを行うという事態が広範に生じるようになりました。こうした多重債務を抱えた多くの人はその問題をだれにも相談できずに追い詰められ孤立化し、自殺、犯罪、ホームレスへと追い込まれたり、ヤミ金のターゲットにされたりして、社会問題化するに至りました。
 こうして、多重債務者はこの社会構造の中から必然的に生じてくる被害者であるということ、また多重債務問題は、非常に深刻な社会問題であるという認識が共有されるようになりました。
 こうした多重債務者に対する救済として、司法的な手段としては、@任意整理、A特定調停、B個人債務者再生、C自己破産等があります。
 ただ、こうした法的な借金整理の手続きが重要であることは論を俟たないものの、多重債務になる過程で崩壊した生活の再建は、借金の問題を法的に解決しただけでは十分ではありません。生活再建を果たしてはじめて、多重債務問題が根本的に解決したと言えるのです。
 この「多重債務者の生活再建」という視座は、住民と身近に接する行政の持つ様々な資源が有機的に連携することによって初めて見えてきます。ここに多重債務対策における行政の役割があるのです。
 

―当会議のあゆみ―
 平成11年頃から、大阪と京都の弁護士、司法書士、消費生活専門相談員らの有志が、「クレサラ問題と行政研究会」という研究会をつくり、地方自治体に対するアンケートなどを含む調査、研究、集会などを4年間行いました。その結果、多重債務者が再生できるよう適切な支援がなされ、充実した相談体制が確立され、多重債務問題を根絶するためには、行政すなわち国・地方自治体・警察・教育等関係機関が一体となって多重債務対策を講ずることが必要不可欠であると強く認識されるに至りました。
 こうして、平成15年10月4日京都において、全国組織「行政の多重債務者対策を充実させる全国会議」が結成されました。この組織は、司法の分野に限らず、学者、地方議会議員、行政職員、一般市民も含め、幅広い分野の方々の参加・協力を得た活発な運動体として活動を開始し、現在に至るまで全国各地で多重債務対策支援講座等を開催しています。
 

―貸金業法等の大改正と当会議の活動―
 社会問題として深刻化する多重債務問題の解決のため、第165回臨時国会において、「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」が、衆参両院の全会一致にて、平成18年12月13日可決・成立し、同月20日に公布されました。
 上記大改正を受けて、内閣に多重債務者対策本部が設置され、同本部は、そのもとに設置された有識者会議の意見とりまとめをふまえて、平成19年4月20日、200万人を超えるとされる多重債務者の救済・支援などの多重債務対策について「多重債務問題改善プログラム」を策定しました。同プログラムの中心は、「丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う相談窓口の整備・強化」です。こうして、政府を挙げて多重債務対策を行う方向が確立し、当会議は、このような流れを受けて、平成19年2月3日の総会にて「行政の多重債務対策の充実を求める全国会議」と名称変更し、活動を強化することとなりました。
 同プログラムの第一の目標である相談窓口の充実強化は、様々な障害を抱えながらも徐々に全国の自治体に広がりを見せています。しかしそれが、孤立化している多重債務者の発見・掘り起こしの段階から問題解決に至るまで、多重債務者の生活再建という観点から貫かれているかという点から見ると未だに心許ないと言わざるを得ません。

  そこで当会議の当面の活動は、次のとおりです。
  多重債務対策に取り組む自治体職員・相談員や法律家を対象に、
 @ 多重債務問題に関する的確で構造的な理解を再度深めること
     これこそが法改正の原動力となったものであって、行政のあらゆる対策の源であるという
    ことについて理解を深めること
 A 多重債務被害のうち最も深刻な、自死や依存症の問題への理解を深めるため、「多重債務
   による自死をなくす会」や「依存症対策全国会議」と連携し、自治体の相談対応の際、この
   問題への理解ある対応ができるようにすること
 B 発見・掘り起こしから問題解決に至った事例を数例取り上げ、目で見える形にして提示すること

・工夫を凝らした徹底的な広報や意識的な発見・掘り起こしを契機に、親身な誘導がなされ、
 庁内のキーマンを軸に庁内外の連携により、問題解決につながった事例をできるだけ紹介
 する。
・既存の制度の活用だけで、問題解決につながる可能性のあることを周知する。
・消費生活部門だけでなく、福祉部門・徴収部門等を含む幅広い行政職員の参加を目指すこと。
・庁内で多重債務者の生活再建に役立つ制度には様々なものがあり、各自治体によって少し
 ずつ違ってきているので、「野洲市多重債務生活再建マニュアル」を参考に、各自治体で
 自治体職員や相談員がこれに関する知識を共有すべくまとめることを促す。

   以上の実践目標を達成すべく、月1回位の頻度で、全国各地で、当会議の主催・共催による支援講座やシンポジウムを開催しています。
 その他にも、自治体の多重債務対策の現状と問題点を探る調査・アンケートや、警察や監督官庁に対し、違法金融業者の取締り、指導・監督の強化を求め、教育機関に対し、消費者啓発の実施等を求める、といった活動も行っています。
 また現在、ホームページやメーリングリスト等による情報提供や意見交換を行っています。
   
 随時入会者を募集していますので、入会を希望される方は、年会費の振込とともに入会申込書を事務局までファックスにてお送りください。